介護の現状と公的介護保険・民間介護保険加入の意味について

目次

各年齢層別の介護認定率について

図表2-1-4 年齢階級別の要介護認定率|令和4年版厚生労働白書-社会保障を支える人材の確保-|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

65歳から69歳までは2.8%の認定率となっているが、85歳以上となると半数以上の57.8%が介護認定となっている。

そして、90歳を超えると72.7%以上が介護認定されており、平均寿命が延びる現代において、介護状態になるリスクは年々高まっていると考えられる。

平均寿命と健康寿命の推移

図表1-2-6 平均寿命と健康寿命の推移|令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

男性、女性共に、平均寿命と健康寿命は延びているが、健康寿命と平均寿命との差が8歳程度ある。

つまり、健康な状態から寿命を迎えるまで、8年間は介護になる可能性が高く、70代後半までには男女ともに介護に対する備えを整えておきたい数字になっている。

要介護認定者数の推移について

令和5年版厚生労働白書 資料編 I 制度の概要及び基礎統計 10 高齢者保健福祉|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

2006年に介護保険制度が改正され、従来の要介護1の一部も含む要支援が「要支援1・2」と2段階に分類されることになり、要介護度の区分が変わりました。1

介護保険利用者数は増加の一途

図表1-9-6 介護保険利用者数の推移及び見通し(図)
図表1-9-6 介護保険利用者数の推移及び見通し|令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

今後も介護施設を利用する人数は増え続けると予測されており、社会問題として非常に大きな課題になっている。

現在の要介護度別にみた介護が必要となった主な原因(上位3位)

要支援者

  1. 関節疾患 19.3%
  2. 高齢による衰弱 17.4%
  3. 骨折・転倒 16.1%

要介護者

  1. 認知症 23.6%
  2. 脳血管疾患(脳卒中)19.0%
  3. 骨折・転倒 13.0%
2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況 IV 介護の状況

要支援者では関節疾患が原因となっている割合が一番多く、衰弱、骨折・転倒と続いている。

高齢者になると、日常生活に制限が出る関節痛や骨折等による筋力の衰えが原因で要支援から要介護状態に移行する人も増えてくる。

また、要介護者になる原因として、認知症以外にも、脳血管疾患による寝たきり状態への移行や半身不随といった障害を負うことも多い。

特に、脳血管疾患は突然寝たきり状態になってしまうリスクも高く、家族はいつそういう状態になったとしても対応が出来るように準備を前もってしておくことが大切である。

運動不足や転倒に注意

脳血管疾患や骨折により突然寝たきり状態になってしまうこともあるので、家族は介護の備えを健康なうちから備えなければならない。

公的介護保険制度について

公的介護保険制度は満40歳以上の方が加入し、市区町村から要介護認定を受けることによって介護サービスが受けられます。

但し、現金が支給されるわけではなく利用したサービスに充当される仕組みです。

介護サービスを受ける場合、利用したサービスの1~3割が自己負担となり、支給限度額を超える場合は全額自己負担となります。

また、対象とならない食費・居住費などは全額自己負担となるので、介護付き有料老人ホームの毎月の費用は高額になりがちなため、誰もが十分な介護サービスを受けられるとは限らないのが現状です。

下記表は負担限度額を利用した場合に掛かる自己負担金額の月額合計です。

介護度給付限度額1割負担額2割負担3割負担
要支援150,320円5,032円10,064円15,096円
要支援2105,310円10,531円21,062円31,593円
要介護1167,650円16,765円33,530円50,295円
要介護2197,050円19,705円39,410円59,115円
要介護3270,480円27,048円54,096円81,144円
要介護4309,380円30,938円61,876円92,814円
要介護5362,170円36,217円72,434円108,651円
サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」 (mhlw.go.jp)

※自己負担率1割で計算(一定以上所得者の場合は2割又は3割)の自己負担です。2
 

上記自己負担部分に加え下記は全額自己負担となるので、介護状態が長期化するとライフプランにも大きな影響が出てきてしまいます。

公的介護保険制度のサービス支給限度額を超えた分公的介護保険制度の対象とならない費用
(食費・居住費・日用品代など)
施設サービス利用時の居住費・食費・日用品代は全額自己負担となります。

主な経済的負担

公的介護保険による自己負担部分に加え、介護付き有料老人ホームを利用する場合は、入居に掛かる一時金や毎月の居住費、食費、日用品代が必要になります。

結果として、一時金で数百万円、月額10万円以上の費用負担が発生することもあります。

ただし、特定の条件をみたすことで補足給付を受けられますので、詳細はケアマネジャーや地域包括支援センターに問い合わせすることをお勧めします。3

サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」 (mhlw.go.jp)

家族に掛かる負担

介護施設に入居する費用が多額に掛かる場合、ご自宅で介護をするという選択肢もあると思います。

その場合、主な担い手としては、配偶者が22.9%、子供が16.2%、子の配偶者が5.4%となっています。

誰が介護している?|リスクに備えるための生活設計|ひと目でわかる生活設計情報|公益財団法人 生命保険文化センター (jili.or.jp)

配偶者が介護の面倒を見る場合は当然ながら老々介護になりやすいだけではなく、配偶者も介護状態になる可能性もあります。

両親ともに介護施設に入居となると年金だけでは足りない可能性が高まってしまいます。

そのため、経済的な問題は家族の負担を増やす形になりがちです。

介護の担い手として子供の割合も多く、その場合は子供の収入が減少するリスクもあります。

そうならないためにも介護費用はしっかりと確保しておく必要があります。

民間介護保険が必要な人

現状、公的介護保険によって介護費用に関する大部分はカバーされていることになりますが、それでも毎月の自己負担部分は多額になります。

介護の平均期間は5年弱というデータもあり、500万円近い自己負担となることが多いです。4

そのため、十分な貯蓄がない方や身近に介護の世話をしてくれる人がいない方は加入を検討したほうが良いでしょう。

また、介護人材の不足が深刻化5しており、介護報酬の引き上げが行われています。

そのため、介護サービス費用が今後増加するリスクが考えられますのでできる限りの準備はしておいた方が良いと考えられます。

民間保険加入をお勧めする人

・介護に使える預貯金が500万円以下の場合

・年金受給額が少なく不安ある人

・身近に介護の面倒を見てくれる人がいない人

介護保険加入で家族会議を実施

介護保険加入をきっかけに、実際に介護状態になった場合にどのような対応をするのか事前に会議を行うことをお勧めします。

介護の負担を引き受けた親族とそれ以外の親族とで相続の際に揉める可能性があります。

費用負担と介護負担を分散させる対応も決める必要があります。

介護は争族になることも

介護の面倒を見た親族とそれ以外の親族で相続時の遺産分割割合でもめる可能性があります。

介護の面倒を見たから多く相続するべきと考える当事者がいる一方で、相続と介護の面倒は別と考える親族も存在します。

事前に介護負担や相続の割合などを取り決めておくことでトラブルの原因を減らすことができます。

介護と子育ての負担が一気にのしかかる世代が増加

介護保険に加入することで、介護費用を賄うことができます。

晩婚化と少子高齢化の影響により、親の介護を負担するとなると子供世代の負担が増してしまいます。

以前のように両親を3人の子供で面倒を見るという家族も少なくなり、一人っ子が2人の両親の面倒を見るという問題も増えてきています。

子供世代は親の介護負担に加え、教育費や住宅ローンなど人生で最もお金がかかる時期に突入していることも多く、身体的、経済的負担に限度があることが多いです。

そのような中で、子供に経済的負担を掛けさせないよう準備をしておくことが大切です。

老々介護や子供世代への負担は重荷

介護は一人だけの問題ではなく、配偶者、子供たちの問題でもあります。

介護を担当する親族の収入源をカバーする意味でも民間保険に加入しておくことは大切です。

公的介護保険は現金給付はありませんので、民間保険で必要となる現金を用意しておくという考えも大切です。

公的介護保険制度だけではなく、民間介護保険に加入することで代理店担当者や保険会社の担当者に介護について色々と質問することが可能です。

家族以外にも身近に相談できる人が増えると不安の解消にもつながります。

  1. 2006年度の介護保険制度改正内容とポイント (kaigokensyu.com) ↩︎
  2. 参考資料2 給付と負担について(参考資料) (mhlw.go.jp) ↩︎
  3. サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」 (mhlw.go.jp) ↩︎
  4. 介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?|リスクに備えるための生活設計|ひと目でわかる生活設計情報|公益財団法人 生命保険文化センター (jili.or.jp) ↩︎
  5. 介護人材確保に向けた取組について | 厚生労働省|厚生労働省 (mhlw.go.jp) ↩︎

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